傷病を装い、休日を楽しむ社員にどう対応するか?
全然元気なのに労災を受給して、できるだけ長期間、不労所得を得ようとする輩が増えています。
社内で虚偽との噂が広まり、尻尾もつかみかかっているが相手は認めない。
そんな膠着状態を打破する手段として、探偵の行動調査です。
労災の基礎知識
最初に基本的なことをおさらいしましょう。
労災給付の概要
労働基準法は、業務や通勤が原因でケガや病気になって働けなくなった人の生活を守る取り決めをしています。
簡単に言えば休業中も給料の6割を支給。
休業3日までは待機期間といって事業主負担ですが、4日目以降は労災保険に払ってもらうこともできます。
現実には事業主が払うことはほとんどなく、労災保険が使用されています。
長期にわたる休業の場合、請求は通常毎月行われます。
休業中の解雇の制限
業務上の傷病で休んでいる間および復職後30日間は、原則として解雇が制限されます。
3年経過しても治らない場合は、「打切保証」を払って解雇することが可能です。
しかし、打切保証は平均賃金の1,200日分で、結構な金額になります。
しかも、従来はとにかく3年経てば打切保証で解決できるという解釈だったのが、事業主が3年払った場合のみが該当し、労災を使っていた場合はダメという判例(※)が出てきました。
※労災給付を受けて3年以上休職していた大学職員の解雇が無効とされた、平成24年の高裁判決
今後はケースバイケースでどういう判断がされるかわかりません。
仕事にも復帰できないし、解雇もできないという宙ぶらりん状態が続いてしまいやすい法制度にどんどんなっているといえます。
不正受給の返済
事業主の虚偽の報告・証明が原因で不正受給が行われてしまった場合、事業主は受給者と連帯で返済が求められます。
意図的に受給者と結託していたなら当然ですが、単純に総務・人事まかせにしていただけなのに、そんな判定をされる可能性もあります。
放置しておいていい問題ではないということです。
社員の心情
「傷病が嘘らしい」という噂が広まっているのに放置すると、まじめに働いている社員の間で不満が高まっていきます。
特に繁忙期などで残業が増え、休みが取りにくなっている時期にはひどくなります。
しかし、十分な証拠もないのに経営サイドが疑念を漏らしたり、解雇に向けた動きをすると別の問題が懸念されます。
傷病を信じている社員もいる場合は「病気になったら社員を切り捨てる、使い捨て主義の会社」だと感じ、会社に反感や失望感を抱くからです。
打開策
まずは総務・人事の社員が訪問して状況を確認し、十分健康であれば復帰か退職を勧めるという話し合いを何度か持つべきでしょう。
しかし、それでも膠着状態が続くことがあります。
しっぽをつかまれても「あの日はたまたま、少し体調がよかった」等の強弁をして譲らない確信犯もいます。
鬱病など精神系の病気は証拠がつかみにくいし、あまり強く出ると本物だった場合は困った反応を起こされることも考えられます。
そういう時に最終手段として探偵の行動調査が使えます。
チーム尾行して、隠し撮りを行い、行動を記録して報告します。
たまたま1日だけでなく、何日も傷病の申告内容と矛盾する行動が確認されれば、虚偽の十分な証明になります。